花山水清
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essay  ·  2019/05/08

インカの村にはたどりつけない


 昨日から、探検家の関野吉晴氏の『インカの村に生きる』という本を再読している。

ここに登場する「インカの村」とは、ペルーの標高4300mの高地にあるケロ村のことだ。

標高4300といわれてもピンと来ないだろうが、富士山よりもさらに500mも高い。


 このケロ村では、インカの時代とほぼ同じ、自給自足の生活が続いている。

本書では、そのケロに生きる人々の暮らし、貴重な習俗の記録が、数多くの写真で綴られているのだ。

どうしてこれほど美しいのか、ため息が漏れる。

この写真の美しさもさることながら、ファインダーを覗く彼の視線もすばらしい。


 だがさらに驚かされるのは、彼の体力なのである。

ケロ村までは車の通れるような道もなく、岩山を縫うようにして徒歩で登っていくしかない。

しかも、平地ではない。

標高4300mである。

当然、空気も薄いのだ。


 高山病は2500~3000mぐらいで発症するといわれている。

日本人に人気の高いあのマチュピチュ遺跡は標高2400mだ。

あそこでは、近くまでは行ったものの、高山病で目的地まで到達できない人も多いし、毎年何人もの日本人観光客が、高山病で亡くなっているときく。


 以前、恩師の相沢韶男先生が、バスでチベットのラサに向かった。

途中で立ち小便しようと思って下車したら、先に用を足していた人がそのままバタッと倒れた、と話してくれた。

そのラサだって標高3600mだ。


 かつて私も、ヒマラヤのふもとにあるガントクという街に行ったことがある。

ガントクには、軍隊しか通らないような険しい道を、延々と登っていくのだ。

いたるところに崖崩れがあり、谷底は遥か彼方にかすんで見えた。

そこでせいぜい標高2000mぐらいだったが、私にとっては大冒険だった。


 ケロはそこからさらに2000m以上も雲の上なのだから、尋常ではない。

そこに大荷物を背負って徒歩で行くなど、信じがたい体力だ。

高地となれば気温差も大きいはずだから、私など到底生きてたどりつける自信はない。

運良く到達できたとしても、また歩いて降りてくるという試練が待っている。

そんなことに思いを巡らすと、軽いめまいとともに、この写真の1枚1枚のありがたみが、さらに脳天に沁みてくるのであった。

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