シリーズ【アシンメトリ現象を解剖する】2

『 アシンメトリ現象で知覚が変化する理由 』


 「アシンメトリ現象」とは、左半身の形態と知覚に特異的に現れる、規則性をもった現象である。

前回は、「アシンメトリ現象」特有の形態的な変化が、左脊柱起立筋の異常な収縮によって発生するしくみをお伝えした。

そこで今回は、「アシンメトリ現象」のもう一つの大きな特徴である、左半身の知覚の変化について考えてみたい。


 知覚の変化の話に入る前に、まずは「背骨のズレ」という用語の定義をしておく必要があるだろう。

「背骨のズレ」の存在自体は、古代ギリシアの医聖・ヒポクラテスの時代から知られていた。

今では普通名詞といえるほどだが、世間一般のイメージと私の考える「背骨のズレ」とでは、大きな違いがあるのだ。


 一般的な認識では、重い物を持ち上げたり転んだりして、背骨に負荷がかかったときにズレると考えられている。

話として見れば、ズレの原因を外力に求めていることになる。

しかし私は、ズレの原因は内力によるもの、つまり外から加えられた力ではなく、体の内側からの力だと考えている。

具体的には、左の脊柱起立筋が、特異的に収縮する力のことである。

左脊柱起立筋が特異的に収縮すると、筋の付着部である椎骨を左に引っ張る力が生じる。

すると、椎骨が左にズレてしまうのだ。


 椎骨とは、背骨を構成する合計24個(頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個)の骨のことである。

「アシンメトリ現象」の場合、脊柱起立筋の収縮は左一側性であるから、これらの椎骨も左側にしかズレない。

もし椎骨のズレに外力が作用するものなら、左右のどちらにでもズレるはずである。

ところが実際は、椎骨に外力が作用したと考えられる状況でも、それはあくまでも補助的なきっかけに過ぎず、ズレる方向には影響しない。

例外なく、左にだけズレるものなのだ。

これが私の考えている「背骨のズレ」である。


 それではなぜ脊柱起立筋は、背骨をズレさせるような異常な収縮を起こすのか。

もちろん脊柱起立筋が、通常の働きをしているときは、背骨がズレるようなことはない。

しかし脊柱起立筋に、何らかの理由でイレギュラーな収縮が起こると、筋肉が引きつって背骨がズレる。

その原因として、私は生活環境中の化学物質や重金属、放射線などの有害物質を候補に挙げている。

ひょっとすると、現在の科学では無害だと考えられている物質も、関与している可能性がある。

睡眠不足などの生活習慣や加齢、遺伝子の問題も影響しているかもしれない。

いずれにせよ、それらの影響で神経伝達に異常をきたした結果、左脊柱起立筋に特異的な収縮が起こるのである。


 さてここからが本題だ。

ヒポクラテスは、背骨がズレる方向が左一側性であることを知らなかったが、他にも彼が知らなかったことがある。

背骨のズレには発痛作用だけでなく、なんと鎮痛作用まで存在しているのだ。


 背骨がズレると、ズレた椎骨が周りの神経や血管など、さまざまな組織に対して機械的な力を及ぼす。

その結果、背骨のズレは多くの疾患と関わりをもつようになる。

要は、背骨がズレるといろいろな症状が出るのだ。

例えば腰椎がズレると、ズレた腰椎の周りの知覚神経が刺激されて、腰痛という症状になる。

腰痛は、背骨のズレによる発痛作用の代表だろう。

ところが背骨がズレていても、発痛作用が全く起こらないことがある。

触診してみると大きなズレがあるから、知覚神経を刺激しているはずなのに、当の本人には痛みなどの自覚症状がないのだ。

当初はこの状態をふしぎに思っていたが、これは明らかに何らかの鎮痛作用が働いて、痛みが抑制されているのである。


 では背骨のズレによる疼痛を打ち消すためには、どのようなしくみが働いているのか。

結論からいえば、内因性オピオイド(モルヒネ様物質)の作用だと考えられる。

背骨のズレは末梢神経だけでなく、時には中枢神経である脊髄まで刺激してしまうことがある。

このとき何らかの信号が、脊髄から上位中枢に伝わって、内因性オピオイドの分泌が誘発される。

すると患部に鎮痛作用が働いて、本来出るべき痛みが抑制されるのだろう。

そしてこの鎮痛作用こそ、「アシンメトリ現象」の最大の特徴である、左半身の知覚鈍麻の理由なのである。


 ここで「アシンメトリ現象」のシステムを整理してみよう。

「アシンメトリ現象」は、有害物質などの外的要因によって、左脊柱起立筋が特異的に収縮することで始まる。

この収縮によって、さまざまな部位が形態的にアシンメトリ(左右非対称)になる。

同時に、左脊柱起立筋の特異的な収縮は、背骨のズレを引き起こす。

ズレが末梢神経に作用すれば、痛みなどの症状が出る。

しかし、ズレによる機械的な力が脊髄にまで及ぶと、内因性オピオイドが分泌されて、疼痛は抑制される。

この内因性オピオイドの鎮痛作用の結果、左半身の知覚が鈍麻する。

これが「アシンメトリ現象」の一連のストーリーだ。


 残念なのは、症状の原因となっている個々の背骨のズレを解消しても、一旦レセプターと結合した内因性オピオイドの作用までは、なかなか解除されないことである。

発射ボタンが押されてミサイルが飛んでいってしまったら、あとから取り消すことはできないようなものだ。

左の脊柱起立筋の盛り上がりが、容易には消えない理由もここにある。

この盛り上がりは、単に背骨がズレただけでなく、鎮痛作用が働く段階にまで到達したときにのみ現れるからだ。

また、そこに伴う疾患も、格段に厄介なものになってしまうのである。

                           (花山水清

形態や感覚などに見られる「アシンメトリ現象」の特徴50
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