シリーズ【アシンメトリ現象を解剖する】スタート!

『 アシンメトリ現象の形と左脊柱起立筋 』


~ シリーズ【アシンメトリ現象を解剖する】<1> 

 前回の当メールマガジンでは、「アシンメトリ現象」の言葉の定義づけをおこなった。

「アシンメトリ現象」とは、左半身の形態と知覚に特異的に現れる規則性をもった現象なのである。


 これまでは、「アシンメトリ現象」の概要や、関連した疾患について採り上げることが多かった。

そこで今号の付録として、「アシンメトリ現象」に見られる形態や感覚などの特徴を、具体的な一覧にしてみたので、自分にも当てはまるかどうかを一度チェックしてみていただきたい。(文末に掲載)

背中側の特徴などは自分ではわかりにくいから、ご家族でお互いにチェックし合うとよいだろう。

このうち一つでも当てはまるようなら、他の特徴も当てはまる可能性は高い。

「アシンメトリ現象」が全く当てはまらない人などまずいないので、当てはまるからといって極端に心配する必要もない。

だが、特徴の度合いは日々変動するものであるから、健康状態の目安として考えていただけたらよいと思う。


 さて、本題に入ろう。

今まで「アシンメトリ現象」の形態的な変化については、左の骨格筋の緊張や収縮だとしか伝えてこなかった。

今回はそういった形の変化が、どのようなしくみで起こるのかを考えてみたい。


 私がいちばん最初に「アシンメトリ現象」の特徴に気づいたのは、こぶのように盛り上がった左の起立筋であった。

あの人もこの人も、みな左腰のあたりの同じ部分で、筋肉がしこりになっているのだ。

これに気がついて、不思議に思ったのが始まりだった。


 起立筋は、正しくは脊柱(せきちゅう)起立筋といって、数ある背筋の総称である。

上は頭蓋から下は仙骨まで、脊柱骨のそれぞれにつながっている筋肉だ。

それらの筋肉が働くことで、体幹は回旋(上体を左右にひねる・回す)・側屈(上体を左右に倒す)・伸展(上体を後ろに反らす)の動きをする。


 では、左の脊柱起立筋だけが盛り上がっているのは、どういう状態なのだろうか。

筋肉というのは、活動するときは収縮し、使わないときには弛緩するものだ。

腕の筋肉なら、上腕二頭筋が収縮すると力こぶができ、弛緩するとこぶは消える。

すると、左の脊柱起立筋がこぶのように盛り上がっているのは、筋肉が収縮した状態だと考えてよいだろう。

しかし上腕二頭筋と違って、「アシンメトリ現象」の場合は本人が意図して力を入れているわけではない。

自分の意思では力を抜くこともできないので、常に左の脊柱起立筋は収縮したままなのだ。

ずっと力が抜けないのだから、「アシンメトリ現象」には激しい疲労感が伴うことも珍しくない。


 それでは、収縮したままの左の脊柱起立筋は、何にその力を使い続けているのだろうか。

先ほど説明した通り、脊柱起立筋の働きは回旋・側屈・伸展である。

これらのうち、最も「アシンメトリ現象」に関係しているのは回旋だろう。

回旋には同側と反対側の回旋があり、脊柱起立筋が回旋筋として働く場合は、反対側回旋となる。

すなわち左側の筋肉が働くとき、上体は右側に回旋するのである。

本来の回旋運動では、内腹斜筋、外腹斜筋の作用が大きい。

しかし「アシンメトリ現象」による脊柱起立筋の回旋の場合は、上体を完全に回しきっているわけではない。

この左脊柱起立筋による右への回旋が、「アシンメトリ現象」特有の、左右非対称な形を作り出しているのである。


 例えば、上体が右に回旋すると左肩は内側に回り込む。

これはノーマルな動きである。

ところがこの状態で筋肉が弛緩しなくなると、左肩が内側に入り込んだままになる。

これが「アシンメトリ現象」特有の形である。

もちろん、筋肉が完全に弛緩しなくなるわけではないので、弛緩しにくくなるといったほうが正確だろう。

他にも、脊柱起立筋が左だけ収縮した状態が続くと、体幹の左側が太くなる。

するとウエストのくびれがなくなって、左だけずんどうになってしまうのだ。


 脊柱起立筋には、回旋筋として体幹を動かすだけでなく、もう一つ重要な役割がある。

それは抗重力筋としての働きだ。

抗重力筋とはその名の通り、人体が重力に拮抗するための筋肉である。

実は左の脊柱起立筋が、抗重力筋として右よりも強く働くことも、「アシンメトリ現象」の形態的変化の原因となっているのだ。


 一つ一つ順を追って、抗重力筋としての作用を見ていこう。

まず、左の脊柱起立筋が抗重力筋として右よりも強く働くと、左半身が引き上げられる。

その結果、左肩が右よりも上がる。

左肩が上がれば、左側の鎖骨と肩甲骨も一緒に持ち上がる。

これが「アシンメトリ現象」の特徴的な形だ。

また同じ理屈で、骨盤も左側が上がる。

骨盤の左が上がると、連動して左脚も引き上げられる。

この状態で椅子に座ると、左の膝が右膝よりも後方に位置し、膝頭が揃わなくなる。

仰向けに寝れば、左右の足先が揃わないので、左脚が短いようにも見える。

だが、実際に左脚が短くなっているわけではない。


 もう一つ、抗重力筋の働きから、頭部の「アシンメトリ現象」の説明もつく。

脊柱起立筋の最上端は、頭蓋の下部に付着している。

この部分で左の脊柱起立筋が強く収縮すると、頭蓋を左下から押し上げるので、頭蓋は右側に傾き、ぼんのくぼも右側に傾斜するのである。


 また、頭部が傾斜して顔面も右側に傾くと、鼻は左に曲がり、左口角は上がったように見える。

ただし頭部の傾斜には、脊柱起立筋の抗重力筋としての働きだけでなく、回旋筋としての働きや、胸鎖乳突筋など他の筋肉の影響も大きい。

しかも、右・左という二次元の動きではなく、三次元としての傾き方であるから、「アシンメトリ現象」の段階によっては、頭部が左に傾いていることもある。

顔面の左右差についてはさらに複雑で、表情筋や咀嚼筋なども含めて、大小さまざまな筋肉が複雑に作用し合っている。

それらの全てを網羅して説明するのは甚だ難しいので、今回は脊柱起立筋の働きにしぼって、「アシンメトリ現象」の形態的な変化を説明してみた。


 これでだいたいのところ、左の脊柱起立筋の異常な収縮が、「アシンメトリ現象」という左右非対称な形を作り出している仕組みをご理解いただけただろうか。

しかし、左脊柱起立筋の収縮は、左右の形を非対称にするだけでなく、その左右の基準となる対称軸すらゆがめてしまっているのである。

左右の対称性を語るうえで、その対称軸があるべき位置に「ない」という事実は、非常に重要な問題だ。


 むろん、人体の対称軸とは背骨のことである。

左の脊柱起立筋が回旋筋として強く働くことで、背骨を構成する椎骨の一つ一つが左側に引っ張られてズレる。

そして、椎骨が連続的に左にズレることによって、本来は対称軸となるべき背骨そのものまでが基準にできなくなる。

この椎骨のズレによって、「アシンメトリ現象」はより複雑で深刻な問題へと発展していくのである。

次回は、椎骨のズレという現象について、より深く解剖していきたいと思っている。 

                    (花山水清)
  

形態や感覚などに見られる「アシンメトリ現象」の特徴50
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(花山水清メールマガジン 「月刊ハナヤマ通信」 

 

 

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