『  ダ・ヴィンチ健康法 <排泄> 』


 前回の当メールマガジンでは、「ダ・ヴィンチ健康法」のなかから、食についてお伝えした。

今回は一転して、排泄について考えてみたい。

食と排泄とでは対極の話のようだが、健康を維持するうえでは、両者は互いに密接な関係にある。

食に問題があれば、結果として排泄の問題となって現れるからだ。


 しかし、「ダ・ヴィンチ健康法」では、食についての項目はいくつもあったのに、排泄については一つしかない。

「便所は待つな、ためらうな」

これだけである。

あまりにもシンプルだ。

だが、示唆に富んでいるともいえる。

人生において、トイレに行くのをがまんしてまで成さねばならぬことなど、ないに等しい。

排泄の欲求の前では、地位と名誉と財産どころか、食欲すらも凌駕されて当然だ。

「便所は待つな、ためらうな」という言葉も、「物事の優先順位をまちがえるな」という人生訓と捉えるべきかもしれない。


 健康を維持するうえでの排泄の問題といえば、「出て困る」と「出なくて困る」の2つに集約される。

このうち、尿も便も全く出ないとなると命にかかわるから、出ないことのほうがより深刻だ。

現代人には、出したいのに出せないという人が多い。

便秘で悩んでいる人もかなりの数にのぼるはずだ。

そのため、便秘解消のための健康情報は、ちまたにあふれかえっている。

そこで必ずいわれるのは、野菜をとることと、運動をすることの2点である。

果たして、これは正しいのだろうか。


 回虫や腸内細菌について多くの研究をしている藤田紘一郎氏は、日本人の腸内細菌が減っていることを危惧している。

そして、腸内細菌の減少が、便秘やさまざまな疾患につながっているのだと説く。

便の約半分は腸内細菌の死骸であるから、腸内細菌が減ると、必然的に便の量も減るわけだ。


 ではなぜ、腸内細菌が減ったのか。

彼は、食物繊維の摂取量が減っているからだという。

他にも、過度な除菌、抗菌、殺菌によって、生活環境の衛生状態がよくなりすぎたことも、腸内細菌の減少につながっているらしい。


 確かに、今と比べれば私が子供の時分は、かなり不衛生だった。

どこそこの飲食店で赤痢が出た、などという話題も身近にあった。

当時は大人も子供も、腹を壊すのは日常的なことだったのだ。


 そもそも排泄の目的とは、体内の要らないものを体外に排出することである。

体に有害なものが入ってくれば、即、嘔吐や下痢として、強制的に体外に排出されるようになっている。

不衛生な環境で暮らしていたころは、知らず識らずのうちに、こういった形で排出の訓練がなされていたのだろう。

だが近ごろは衛生状態がよくなりすぎた結果、排出機能が訓練されるチャンスが減った。


 そういえば、旅先で便秘になる人はよくいるが、インド旅行で便秘になったという人の話は聞いたことがない。

やはり便秘の理由は、野菜などの食物繊維の摂取量よりも、衛生状態の影響が大きい気がする。

「ダ・ヴィンチ健康法」でも、「薬を飲むものは療法をあやまるもの」という項目がある。

現代なら、殺菌剤の乱用がこれに当たるだろう。


 また、便秘を招く要因として、私が注目しているのは骨のズレである。

骨のズレと便秘との関係は、これまでにも何度かお伝えしてきたはずだ。

例えば、当院の来院患者のなかに、がんこな便秘で悩んでいた60代の女性がいる。

彼女は、便秘解消のためと聞けば何でも試してきたが、何をやってもスッキリと出たことがなかったという。

ところが、当院で骨のズレの矯正を受けた帰り道、にわかに便意を催した。

あわてて近くのデパートのトイレに駆け込むと、それまでには経験したことがないほどの大量の便が出た。

本人の話では、おしりに届くかと思うぐらいの量だったそうだ。

具体的すぎる報告ではあったが、まことにめでたい話である。


 便秘だけでなくさまざまな排泄の問題に、骨のズレは大きく影響している。

ある50代の男性は、スポーツで転倒した後、激しい腰痛と同時に、頻尿を併発していた。

彼は病院で治療を受けていたのだが、全く効果がない。

しまいには、原因は精神的ストレスだと診断された。

だが、骨のズレの矯正を受けたら、腰痛だけでなく頻尿の症状まで解消してしまった。

症状の原因は、精神的ストレスではなかったのである。


 彼のように、激しいスポーツや過度の運動があだになった例は、よく見られる。

「ダ・ヴィンチ健康法」にも、「体操をするなら動きを少なく」と書いてあるのは偶然ではない。

体操というのは、その動きによって骨のズレ幅が大きくなり、体調を崩す危険性があるのだ。

だから、体操が健康のためによいなどとは、一概にはいえない。


 また、排泄作用の一つである発汗も、多くても少なくても問題になり得る。

特に、更年期障害による多汗で悩んでいる女性はたくさんいるだろう。

だが、汗が出すぎることよりも、汗が出ないことのほうが深刻であることは知られていない。


 ある40代の女性は、暑さのせいで何度も熱中症になりかけた。

もちろん、熱中症の原因は気温の高さにあるのだが、彼女の場合は胸椎が大きくズレていた。

彼女だけでなく、骨のズレ幅が大きいと、交感神経の働きが異常になって、発汗機能が低下することがあるのだ。

汗が出せなければ体温調整ができないので、熱中症にもなりやすい。

ところが問題はそれだけではない。

汗が出にくいのは、「アシンメトリ現象」に見られる特異的な症状の一つなのだ。

つまり、汗が出にくい状態は、のぼせや熱中症につながるだけでなく、より重大な疾患へ向かう可能性を示唆しているのである。


 汗が出にくいのはエアコンのせいだとか、最近はどこでもエアコンが効いているから、子供たちの汗腺が不活性化しているともいわれている。

しかし、エアコンを使用したからといって、汗腺が不活性化するわけではない。

軽く体を動かすことなどでも、汗腺は意識的に活性化できるのだ。

だが「アシンメトリ現象」の場合は、汗腺ではなく、汗腺の働きを司る交感神経の働きそのものが異常になっている。

すると、いくら汗をかこうとしても、苦しいだけでなかなか発汗に結びつかない。

お風呂で長湯してねばってみても、のぼせてしまうだけである。

しかも、骨のズレを常に定位置に戻していても、「アシンメトリ現象」による発汗の異常は、すぐには改善されないので厄介だ。

この発汗異常のメカニズムについては、骨のズレによる影響が複雑にからみ合っているので、いずれしっかりとまとめてお伝えしようと考えている。


 さらにダ・ヴィンチの手記には、「消費しつくした栄養分と等しい栄養分を補給しなければ健康を失う」という記述がある。

ダ・ヴィンチの時代なら、それですんだ。

食品として摂取した物と排泄物との関係にしても、等式として成り立っていただろう。

ところが現代では、この単純な等式が成り立たなくなっている。

食品を介して、有害な化学物質や重金属、放射性物質までが体内に入り込む。

これらの物質は、「アシンメトリ現象」の原因にもなっている。

健康のためには、こういった有害な物質を、すみやかに体外に排出する必要がある。

しかし、これらを体外に排出することは、地球環境から「アシンメトリ現象」の原因物質を取り除くのと同じぐらい、困難なことなのである。


 ただし、どのような状況であっても、われわれが生命を維持するための基本に変わりはない。

そこで今回も参考のために、排泄に関して私が日ごろ意識していることを記しておく。


【1】日常的によく歩く。

骨のズレの解消のためにも、ウォーキングがいちばん。

うっすらと汗ばむ程度のスピードで歩くのが、健康のためには最も効率のよい運動である。


【2】極端な体操や過度な運動をしない。

骨のズレ幅を広げるような動きや転倒などの危険性を考慮すれば、健康のために体操や運動をする必要はない。

ウォーキングも、翌日に疲れが残るほどでは過剰だ。


【3】デスクワークの合間に、こまめに立って動く。

一日中、座りっぱなしでは、腸の働きがにぶくなる。

座るなら、前かがみにならないように気をつける。


【4】生活のリズムを一定に保つ。

規則正しい生活こそ、健康の要である。

毎日同じ時刻に寝て起きて食事をとり、トイレに行くことを習慣にする。

食事をとることで、腸のぜん動運動が促されて排便につながる。


【5】意識して「水」を飲む。

水分の補給は、排尿・排便にも発汗にも重要。

コーヒーやジュース、アルコールなどではなく、「水」そのものを飲むこと。

ただし、代謝できる量には個人差があるので、大量に飲むことはおすすめしない。


 排泄というのは、日々の健康のバロメーターである。

そこに問題があるようなら、骨はズレていないか、生活は不規則になっていないか、しっかり歩けているか、水の飲み方が足りないのではないか、といったことを、確認してみるとよいだろう。

よほどのことがない限り、これらのことを意識するだけで十分なのである。


 次回は、ダ・ヴィンチの手記を参考にして、睡眠についても考えてみようと思う。

(花山水清メールマガジン 「月刊ハナヤマ通信」 

 

 

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