【 線維筋痛症と圧痛点 】

 

 私は日ごろテレビを見ていないせいか、今、はやっている事柄や話題には相当うとい。

まして芸能関係となると、平成以降のことはまず知らないし、興味もないのである。

ところが、日本でも有名なレディ・ガガというアメリカの人気歌手が、線維筋痛症(FMS)で活動の休止を表明したという話を耳にして関心をもっている。

 
 線維筋痛症については前回も軽く触れたが、当誌では10数年前にも取り上げて説明したことがある。

そのとき、線維筋痛症は単なる背骨のズレによる諸症状の羅列であると結論づけた。

つまり、背骨のズレを矯正しさえすれば解決する話なので、その存在をあまり重く考えてこなかったのである。

しかし、あれから10数年たつというのに、医学界では症状の原因解明から治療法に至るまで、全く進歩しないまま患者数だけが増え続けていたようだ。

確かに、背骨のズレという視点を持たずに線維筋痛症の諸症状を見れば、原因不明の非常に難解な疾患と捉えてしまっても仕方がない。

実際、レディ・ガガのように、アメリカで最先端の医療を受けられるような、極めて有利な立場の有名人でさえ、症状が解決することなく難儀しているのである。

そして、そんなことが私のような者の耳に届く程、世の中の人にとっても重大な話なのだ。


 そもそも線維筋痛症とは、全身のさまざまな痛みやこわばり、めまいや吐き気、月経困難、精神神経症状などといった、原因不明の症状を総称した疾患だとされている。

同様の疾患としては、慢性疲労症候群(CFS)、顎関節症、間質性膀胱炎などもあるが、これらは全て、背骨のズレによる諸症状に対して、くくり方を変えてそれぞれ病名を付け替えただけである。


 また、線維筋痛症は血液検査や画像検査では異常を特定できないため、病院では断定的な診断を下すことができない。

唯一の足がかりとされているのは、圧痛点を用いた診断方法である。

圧痛点というのは、指で表皮を圧迫すると特異的な痛みを感じる場所のことであり、全身にある18か所の圧痛点のうち、11か所以上に痛みが認められれば、線維筋痛症だと診断される。

ほかにも、いろいろな疾患にそれぞれ特有の圧痛点があるそうだ。

そういえば、私が子供だったころの1950~60年代には、腹痛を起こして病院に行くと、医師が腹部の圧痛点を押して虫垂炎かどうか確認していた。

その後、1970年代ぐらいから分子生物学が急速に進歩した結果、痛みに対する遺伝子やタンパク構造が分子レベルで解明されるようになった。

また、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)の開発によって、痛みによる脳の活動部位や神経回路網が可視化できるまでになったのである。

痛みというのはあくまでも本人の自覚的なものであるから、それ以前は痛みを数値や画像に置き換えて客観視することができなかった。

つまり、他人の痛みの度合いを正確に理解するすべがなかったのである。

それが科学の進歩によって可能になったのだから、痛みに対する医学は歴史的な大進歩を遂げたはずだった。

ところが線維筋痛症の診断に関しては、半世紀前のレベルを超えられずにいるようだ。

 
 私はいつも、背骨の矯正で痛みが消えた患者さんたちから、病院ではエックス線撮影までしているのに、なぜ背骨がズレていることに気がつかないのだろうと訊かれる。

たった数分の手技であっけなく片づく症状が、散々病院では検査を受けても治らないどころか原因すらはっきりせず、しまいには精神的な思い込みだとまでいわれたのだから、つい不満も出るだろう。

その不満の矛先は、今まで通っていた病院なり医師なりに向けていただきたいところだが、実はエックス線画像でも背骨のズレを見つけられるはずなのだ。

しかし、もし完璧なエックス線の画像が揃っていたとしても、それを見る医師に、「背骨がズレているのではないか?」という視点がなければ、全く役には立たない。


 そして残念ながら、どのような組織や団体でも、システムのでき上がった世界では、当事者が自らの視点を変えるということは非常に難しいのである。

特に医学の世界では、最先端を走る研究者が、そこから一歩引いて医学の全体像を見ることなどできない。

そんなことができるのは、よほどの天才かドロップアウトした人間ぐらいだ。

そのため、脳科学や分子生物学といった最先端医学でどんなに痛みの研究が進んだとしても、その視点からでは、痛みの原因である背骨のズレという現象が発見されることはないだろう。

それよりも、古典的ではあるが、圧痛点を探す技術が向上したほうが、背骨のズレという現象にたどり着く可能性は高い。

ただし、モルフォセラピーの技術レベルから見れば、医師たちがおこなっている圧痛点の診断方法は、まだまだ未熟である。


 たとえば線維筋痛症の場合、体の表側8か所、裏側10か所に圧痛点を指定しているが、これではまるで漢方医学のツボである。

漢方でいうところのツボは、押す人によっても地域や時代によっても位置が微妙に異なるため、かなりあいまいなのだ。

この事実が、漢方のツボを批判してきた医師たちの常套句になっていたはずである。

ところが線維筋痛症の圧痛点となると、なぜかツボ同然のあいまいさを許容してしまっている。


 一方、モルフォセラピーにおいては、圧痛点のように刺激する場所を指定する場合、正確さを期すため、特定の神経名を用いることにしている。

しかも、圧痛点診断のように、4キログラムもの力で垂直に押すような危険なことはしない。

4キロというのは、押して爪が白くなるぐらいの力が目安だとされているが、力の逃げ場を作らずに、4キロもの力を患者の体に加えたなら、どんなアクシデントが起きてもおかしくはない。

少なくとも、線維筋痛症の症状を悪化させるぐらいの影響は、十分に考えられるのだ。

そのような力を、単に診断だけのために用いることは避けるべきである。


 モルフォセラピーの手技では、肩にある肩甲背神経をねらって刺激することがあるが、そのとき施術者は、指先の向こうに神経の位置を感じ取り、ピンポイントで軽く指を当てるだけだ。

軽く触れるだけの弱い力であっても、ピンポイントで当てれば、患者は肩甲背神経上に走る痛みを感じる。

そうやって施術者が患者の全身に刺激を加えていくことで、背骨のズレによって鈍くなった神経の働きを、一挙に正常化させることもできるのだ。
 
さらに、背骨のズレの度合いや組織の変化の具合、リンパの腫れ方などを総合して、患者の痛みの違いを指先で客観的に判断することもできる。

単なる手技といえども、これはかなり高度だろう。

なにも最先端医学を持ち出すまでもなく、線維筋痛症レベルなら、モルフォセラピーは十分に活用できる技術なのである。


 さて、このように改めて考えてみると、背骨のズレという現象もさることながら、その解消のためにおこなっているモルフォセラピーの技術そのものについても、お伝えしきれていなかったことに気がついた。

私にとっては当たり前すぎて、この技術の特殊性や有用性を忘れていたようだ。

今回はたまたま圧痛点がきっかけとなって思い出したわけだが、今後また折を見て、モルフォセラピーの技術的な話についても書いてみたいと思う。

 

                           (花山水清)
 

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