【 がんは炎症である 】

メールマガジン月刊ハナヤマ通信 Vol.365 3/1/2017 

 

 夢とは不思議なもので、日ごろ考えてもいないようなことが、突然現れる。

つい先日も、「がんはなぜ硬いのか」と真剣に考えている夢を見た。


 がんはゴツゴツとして岩のように硬いことから、昔はがんに「岩」という字を当てていたそうだ。

 

たとえ夢でも、「がんはなぜ硬いのか」というのはかなりおもしろいテーマである。そんなことは今まで一度も考えたことがなかったのに、夢のなかでは、ちゃんと解答まで用意されていた。

「細胞とは発泡スチロールの気泡のようなものである。
スチロールの気泡が小さければ、その密度は高くなり、硬くなる。
さらに限られた空間では、より多く発泡したものががん細胞だといえる。
だからがんは硬いのだ」

 

こんなもっともらしい説明だった。


 なるほど物理の解答としては間違っていないだろうが、医学の話としてはどうだろう。だが夢とはいえ、発泡スチロールのたとえはユニークだ。

 目が覚めてから、改めて「がんはなぜ硬いのか」について考えてみた。
そこでふと、「がんは炎症ではないか」という考えが浮かんだ。


 頭をぶつけてできたたんこぶのように、打撲などで炎症を起こすと組織は硬く腫れ上がる。それならば、がんの硬さも炎症が極まった状態ではないのか。


実際多くのがんで炎症性のサイトカインが検出されているのだから、がんと炎症とは無関係とはいえない。

 米国に、ロバート・A.ワインバーグ(1942-)という、がん研究で有名な分子生物学者がいる。彼には、『 がんの生物学 』という大著があって、
私もたいへん興味深く読ませていただいた。


 そのなかに、「多くの炎症状態は、腫瘍促進の役割を果たす」という記述があった。さらに「がんは慢性炎症の部分に生じる」とも書かれていたのである。

 確かに、がんは肝炎、すい炎、大腸炎、胃炎、胆のう炎などのような慢性炎症の部位に生じることが多い。またヤケドの炎症のあとには、皮膚がんが発症しやすいこともよく知られている。


その上アスピリンのような抗炎症薬が、がんの罹患率を抑制するという事実からも、がんは炎症とのつながりが深いことがわかるだろう。

 近年、発がんに対する考え方は多段階発がん説が一般的になっている。

発がんは発がん物質による遺伝子の突然変異によって起こるという、従来の単純な説でなく、より複雑なプロセスによって起きているという考え方である。


 そのためワインバーグも、炎症は腫瘍進展に対してあくまでも付加的な役割を担っているに過ぎないと説明している。


しかし私は、がんそのものが炎症ではないかと考えてみたのである。
そしてそれらの炎症にはすべて、背骨のズレが関与していると想定して、そこから発がんのメカニズムを再構築してみた。

 炎症というのはそれ自体は病気ではない。生体の自己防衛的な生理反応である。するとがんも病気ではなく、炎症という生理反応の一つであると捉え直す
ことができる。

 そもそも病気とは、何らかの病因があって病態としての症状が現れたものである。
つまり発症のメカニズムをさかのぼっていくと、必ず何らかの根本となる原因にたどりつくはずなのだ。


 逆にいえば、その原因を取り去れば病気も消えることになる。ところが今の医学ではがんの病因の特定すらできていないのだ。

 ワインバーグも当初は、がんの病因はいずれ特定の遺伝子に還元され、分子生物学で征服できるはずだと考えていた。


しかし研究すればするほど、がんの共通項など見つからないどころか、さらに発がんの仕組みは複雑さを極めていったのである。そのため彼は、「がんは規則性の全くない複雑なカオスの世界だ」と告白している。


 だがここで、「がんは炎症である」と捉えることで、背骨のズレこそがすべ
てのがんの共通項となる可能性が出てきたのだ。

 背骨のズレによる機械的な刺激は、その周辺に必ず何らかの炎症を引き起こ
す。また、がんはズレによって刺激された神経の支配領域、つまり炎症部位に発している。
これは原発巣だけでなく、転移がんでも同じである。


 これまでの常識では、背骨のズレが炎症の原因だとは全く考えられていなかった。だから、がんと背骨のズレとの関係についてまで、だれも気づくことがなかったのだ。

 ワインバーグの著書に、胆のうがんに関する記述がある。
要約すると、胆のうに発生するがんは胆石による長年の機械的な炎症が原因だというのだ。


 もちろん胆石の機械的な作用が胆のうに炎症を引き起こすことに、異論を唱える人は一人もいないだろう。

 

 しかし私は胆のうの炎症に関しては、胆石の有無よりも背骨のズレのほうがはるかに影響が大きいと考えているのである。

 以前ある会合で食後に腹痛を起こし、脂汗を流して苦しんでいる男性がいた。まわりの人が救急車を呼ぼうかと思案していると、その場に居合わせた友人が私に「何とかしてあげて!」というのだ。


 彼のかなり立派な体格と食後の激しい腹痛という状況から判断すれば、それは胆石のパターンだった。そこでとりあえず体を診てみると、明らかに胆のうの周辺が腫れている。


やはり胆石かと思ったが、その腫れているあたりの肋骨が妙な位置にあのが気になる。

 

そこで胸椎のズレを丹念に戻していくと、肋骨の位置は正常になって胆のう周辺の腫れも引いたそれと同時に激痛もウソのように治まってしまったのである。

 その後の病院の検査では、胆石による胆のう炎だったのだろうと診断されたようだ。しかし胆石がなくても、背骨のズレが原因で胆のう炎を起こしている例はある。

 

彼の場合も、炎症の実体は胸椎のズレだったのだから、胆石の存在は単なる炎症のきっかけだったに過ぎない。

 さて、通常は背骨がズレてもそのズレ幅が小さければ、背骨は自然に正しい位置に戻るものである。だがズレの幅が大きいと、なかなか元の位置に戻ることはない。


その結果、10年も20年も背骨がズレたままで暮らしている人も決して珍しくはない。
つまり10年20年どころか、場合によっては30年も40年も、慢性的な炎症を抱えていることになる。


ただ背骨のズレという知識がなければ、炎症を抱えていること自体が認識されないだけなのだ。

 ではワインバーグのいう通り、がんが慢性炎症の部位に生じるものであれば、背骨のズレによる慢性炎症の部位にがんが生じると考えてもおかしくは
ない。


さらにがんそのものが慢性の炎症であるとするなら、その原因さえ取り除けば、がんの可逆的変化も可能になるはずだ。


 現在の病院でのがん治療は不可逆的治療であり、がん細胞を正常細胞に置き換えられるわけではない。


しかし背骨のズレががんの共通項だと認識されるようになれば、がんは制御不能なカオスの世界から、一挙にシンプルな秩序の世界へと還元できるかもしれないのである。                 

(花山 水清)

    参照 がんの生物学 』ロバート・A.ワインバーグ

 

 メールマガジンバックナンバー目次

後の号 ←                       → 前の号

Cookie ポリシー | サイトマップ
(C)Hanayamasuisei.co.ltd. All Rights reserved. 文章・画像の無断転載はご遠慮ください