花山 水清
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エッセイ  ·  2019/03/30

仕事に命を懸け、日本一痛い思いをしてきた男


 昔、インドの田舎でゲストハウスに住んでいたことがある。

ある夜、日本から電話があった。

電話があったといっても、電話機があるのは私の部屋から100m以上も離れたところである。

そこまでの道のりは、ちょうどその日の昼間、コブラが出て大騒ぎになった草むらを抜けて行かなければならない。

徒歩だし、もちろん街灯などない。

真っ暗ななかを、懐中電灯を頼りにしてやっとたどりついたら、電話口からは懐かしい日本語が響いてきた。


 電話を切って、また暗い草むらを抜けて部屋まで戻ると、玄関口で何やら動くものがある。

あわてて懐中電灯で照らすと・・・サソリだった。

昼がコブラで、夜、サソリ。

しかもちょっとしたロブスター並のサイズである。

電話一本受けるのも、かなり命がけなのだった。


 その後、間もなくして日本に帰ったが、私には住むところがない。

仕方ないので、しばらくは知人の家に居候していた。

はるばるインドまで電話をかけてくれたのも、居候させてくれたのもこの人、スタント界のレジェンド、高橋勝大さんである。

通称「ボス」、私もそう呼んで、長いことお世話になってきた。

インドから帰ったばかりの私は栄養失調だった。

体重が50キロにも満たない状態だったのに、ボスのお宅で三度々々豪華なタダ飯をいただいて、生き延びたのである。

私が今(命)あるのは、ボスのおかげだ。


 私の大師匠である民俗学者の宮本常一も、当時の日銀総裁だった渋沢敬三の邸宅に居候していた。

渋澤から、「日本一の食客」といわれていたという逸話もある。

その環境があったればこそ、彼は民俗学であれだけの業績を残せたのだ。

果たして私の場合はどうだろうか。


 ボスの体には、40数ヶ所もの骨折の痕がある。

「身体を使うことに関しては、誰にも負けたくなかった」という言葉の通り、スタントマンとしてやむを得ない事情もあっただろうが、他人にはいえないほどの痛みを抱えて生きている。

私が治療の世界に足を踏み入れてからは、その一つ一つを練習台にさせてもらってきた。

その成果の結晶が、現在のモルフォセラピーなのだ。


 あれからもう四半世紀が過ぎようとしている。

今では大勢の人が、モルフォセラピーの技術の継承者となり、世界へと飛び立っていった。

ボスは私の恩人というだけでなく、モルフォセラピーの功労者でもあるのだ。

 
 そのボスが最近、スタントマンとしてだけでなく、生身の人間としても生き様が注目されている。

特にこのインタビュー記事(「常に最善の準備で先手必勝を。スタント界の生きる伝説・髙橋勝大さん|クレイジーワーカーの世界」)など、極めておもしろい内容になっている。

彼ほど「粉骨砕身」という言葉が似合う人もいないことがよくわかる。

このインタビューがそのまま本になってくれたらいい。

題名は『仕事に(文字通り)命を懸けた男』、副題は「日本一痛い思いをしてきた男の生き様」にしよう(笑)


 このインタビューのなかでボスは、「僕はすごく神経質で臆病なんです」と語っている。

命懸けの仕事だからこそ、本人が大胆で向こう見ずなタイプでは、命がいくつあっても足りない。

だからこそ、細心の注意を払って準備をし、結果が読み切れる状態で仕事に臨むのだ。


 恐れ多いが、私も似たところがある。

体を扱う仕事である以上、慎重で臆病でなければ、患者にとっては危険なだけだ。

他人様の体で一か八かの冒険をするわけにはいかない。

だから、施術者は神経質で臆病であるべきだと思っている。

これも、ボスから教わったことなのかと気づくと、またしても頭が下がるのであった。

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