私は日本でもっとも美しい仏像は、法隆寺の百済観音像だと思っている。 百済観音像といえば、飛鳥時代を代表する仏像の一つである。 その左右対称ですらりとした八頭身は、アルカイック様式を思わせる。 しかし日本では、このようなプロポーションを持つ仏像は他にはない。...
私は美術家である。 アーティストと表現することもあるが、自分では美術家だと思っている。 美術家の目的は、自然のなかから美を見つけ出し、それを切り取ることである。 自然から美を見つけること自体はむずかしいことではない。 神が作った自然のなかに、美しくないものなど存在しないからだ。...
昨年2月、大学の同期生たちが銀座でグループ展を行なった。
招待されて出かけてみたら、40年振りの旧友たちはみな私同様ジジイの顔をしていた。
この40年の間、美術の世界でそれぞれが精一杯奮闘していたようで、彼らの顔を眺めているといろいろな意味で感慨深かった。
数年前、西洋中世美術史学者である馬杉宗夫先生から何冊かご著書をいただいた。そのなかの1冊に『黒い聖母と悪魔の謎』(講談社現代新書)があった。 『黒い聖母と悪魔の謎―キリスト教異形の図像学』 (講談社現代新書) 馬杉 宗夫 講談社 1998-07...