『モナ・リザの左目』非対称化する人類(藤原書店)の著者である花山水清の最新作【小説『ザ・民間療法』】を公式サイトにて連載中!
20世紀末の日本において、ある一人の男Mが齢40にして美術の世界から民間療法の世界へと飛び込んだ。彼は美術家として培った能力によって、人体にある特異な現象を発見。その意味を知って震撼する。
だがこの現象の存在を訴えるMの発言は、既存の社会からはことごとく排除されていく。この現象がもたらすインパクトはあまりに巨大で、同時代の人間の多くには全容を把握することさえできなかった。そして理解できた人間は、自らの立場を守るために沈黙し、Mにも沈黙を強いるしかなかったのである。
彼はその後もさらに現象の解明に年月を費やし、ついには老いと呼ばれる年齢を迎えた。「このままでは神から託された預言が埋もれてしまう」と焦るM。彼が見つけてきたもの、成し遂げたものとは何だったのか。果たしてその真実が正しく評価される日は来るのか。
人類史に残る発見の軌跡とともに、世界の民間療法の実像と医療の限界に迫る本稿は、「真実はフィクションのなかでのみ存在し得るのか」を探る実験小説である。