
私は西岸良平さんのマンガが好きだ。
彼のマンガには、パラレルワールドをテーマにした作品がよく登場する。
パラレルワールドとは、ある時点で分岐し、並行して存在する別の世界のことである。
人生でいえば、今の自分の人生とは全く違った人生が並行して展開していることになる。
西岸作品では、別の道を歩んだパラレルワールドの自分の姿を見て、今の人生がいかに幸せであるかに気づく設定になっている。
そこには現在の自分の人生に対する、あきらめとも満足ともとれるふしぎな風景があった。
私もふとした瞬間に過去を振り返ることがある。
あのとき思い切ってああしていればどうなっただろう、と夢想する。
そこにはもう一人の自分がいて、全く違う人生を歩んでいる。
そうやって、人は幾度も過去の自分を修正しようと試みる。
しかし修正した先の人生をだれも知ることはない。
実はパラレルワールドには絶対的な決まりがある。
人生の岐路に立ったとき、どの道を選択しても、二者択一ならどちらか一方の自分しか生き残ることはできないのだ。
パラレルワールドは実在するが、その世界のどこにも自分は存在しない。
他の道を選択した自分は、みなとうに死んでしまっている。
今の自分がここにこうして生きているのは、過去の人生において「全て」正しい選択をした結果なのである。