408号 2020/10
顎関節症(がくかんせつしょう)とは、「口が大きく開けられない」「口を開けるとあごが痛い」「口の開閉時にあごからカクカクと音がする」などの症状が出る疾患だ。
口が開かないせいで歯科で治療が受けられなかったり、食事もままならなかったりするので、なかなか厄介である。
その原因を口腔外科では、咀嚼筋(そしゃくきん:噛むための筋肉)や顎関節組織の障害、精神的ストレスなどだと考えている。
特に顎関節のなかにある、関節円板に障害のあるものが発症の大部分を占めるといわれる。
そして病院での治療には、スプリント、薬物療法、手術などがあるが、決定的な治療法はまだない。
しかし私の見た限りでは、顎関節症の人は必ずといってよいほど、頭蓋と第1頚椎(首の一番上の骨)が左にズレている。
環椎とも呼ばれる第1頚椎は、他の椎骨と比べて特殊な形をしていて、横突起という横に飛び出した部分がとても長い。
そのため第1頚椎がズレると、この長い横突起が直接、下顎骨や靭帯に当たってしまう。
これが顎関節症の諸症状の原因となっているのだ。
従って頭蓋と第1頚椎のズレを矯正すると、顎関節症の症状に変化が見られる。
この事実からも、ズレと症状との因果関係は明らかだろう。
さらに顎関節症だけでなく、顎関節症の随伴症状といわれる頭痛や肩こり、めまい、耳鳴り、難聴、鼻炎、舌痛、歯肉炎などといった症状まで、ズレの矯正で消えることがある。
これまではこれらの症状の多くが原因不明で、病院では根本的な治療法がなかった。
そこで最近は、顎関節症に対する治療として、モルフォセラピーを実施する歯科クリニックもある。
患者の利益を最優先で考慮するなら、今後もこうした医師が増えていくことを期待している。
(花山 水清)