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「健康診断は受けてはいけない」という話は本当だろうか

メールマガジン「月刊ハナヤマ通信」402号 2020/04  改訂2020/12

 

 毎年、私の元へ役所から無料の健康診断の案内が来る。

 

しかし私は健診なるものを大人になってから一度も受けたことがない。

 

私とちがって、たいていの人は職場などで健診を受けさせられているのだろう。

 

もし健診を拒否すれば、懲戒解雇の対象になることもあるそうだ。

 

本来なら国民の権利であるはずの医療が、義務ですらなく強制になっているとしたら、まるで徴兵検査ではないか。

 

もちろん日本以外には職場での集団健診のシステムなどないのだから、これでは福利というよりも医療ファシズムだ。

 

 

 しかもこの健診の内容が屈辱的である。

 

女性に対する検査方法など、医療という看板をはずせば限りなく犯罪に近い。

 

それもこれも、健診は国民の健康増進に寄与し、寿命の伸長に役立つと思えばこそ許されてきたはずだ。

 

ところが実際には、健診が健康に貢献しないどころか害まで与えて寿命を縮めているとなれば大問題である。

 

 

 最近、手にとった『健康診断は受けてはいけない』という本で、日本の健診の実態を知って私はかなりの衝撃を受けた。(※1)

 

著者である元慶応病院の医師・近藤誠氏については当誌で何度か取り上げてきたが、本書を読むのと読まないのとでは寿命がちがうとすらいえるだろう。(※2)

 

いかんせん正確性を重視した記述であるせいか、医学情報になじみのない人には読むのがむずかしい気もする。

 

そこでここに主なポイントを記しておくので、この内容に興味や疑問を感じた方は原著を参照していただければと思う。

 

① 健康診断を受けて寿命が伸びたというデータは存在しない

 

② がんは早く見つけるほど早く死にやすい

 

③ 日本で見つかる早期のがんは良性病変だから、欧米の多くの国では治療の対象外

 

④ 大腸ポリープを放置しても、がんにはならないことは日本の医学界でも常識

 

⑤ 血圧を下げる薬は認知症や脳梗塞のリスクを高める

 

⑥ 検診で前立腺がんを見つけても死亡数が減らないので、米国やカナダでは前立腺がんの検診を受けないことを推奨

 

⑦ 日本では、前立腺がんの発見数が増加するに従って死亡数が増加

 

⑧ 乳管内がんとも呼ばれる上皮内がんは乳がんに含めず、良性腫瘍と判断する国が多いのに、日本ではほとんど乳房全摘手術になる

 

⑨ 乳がんのマンモグラフィ検査を実施したほうが死亡数が増えるので、世界ではマンモ廃止の方向

 

⑩ ピロリ菌で胃がんにはならない

  

 

 さて、いかがだろうか。

 

日ごろ見聞きする情報とあまりにかけ離れているので、にわかには信じがたいと感じる人も多いかもしれない。

 

だが全て最新の医学データを元にした結論なのだから、疑いようがない。

 

私には違和感がないどころか、「やはりそうか」と腑に落ちる話ばかりである。

 

 

 20世紀後半に、オーストリア生まれのイバン・イリイチという哲学者が活躍していた。

 

彼の来日時には知識人も詰めかけたというから、日本でも影響を受けた人は多いはずだ。

 

そのイリイチは、

 

「医者・病院による医療は、病気を治していない。

 むしろ逆に病気をつくっている。

 なぜなら年々病人の数は増え、病気の種類も増えている。

 医者が病気を治しているなら、その結果は逆になるはずだ。

 健康に医学は反している」

 

とまでいっていたのだ。(※3)

 

 

 残念ながら現在の日本でも、ある意味では健康と医療が背理の関係にある。

 

財政難で病院がなくなったら、逆に穏やかな自然死が増えたという夕張市の話が好例だろう。

 

 

 他にも、『健康生活委員会』という近藤誠氏と養老孟司氏との対談をまとめた本も、主旨は本書と同じであった。(※4)

 

両氏は医師であると同時に、お互いに気を許せる関係でもあるようだ。

 

そのせいか、ふだんよりも話が弾んで、よそではしないような話が展開している。

 

そして二人とも「健診などぜったい受けないようにしている」と断言していた。

 

 

 このような反医療的な態度のことを、通常の医療の世界では「医療ニヒリズム」だといって批判する。

 

ところがふたを開けてみれば、健診を推進している側の医師たちの健診受診率は、一般人よりも大幅に下回っているのである。

 

そこに医師たちの本音が透けて見える。

 

 

 医師本人にがんが見つかったときも、患者と同様の治療を受けるかどうかは疑わしい。

 

「なぜ、患者におこなったのと同じ手術を受けないのか」

 

という批判に対して、

 

「医師の特権として、この程度のわがままは許されるはずだ」

 

と正直に自著に書いていた医師もいる。(※5)

 

これは農家の人が、出荷用と自宅用とで農薬の使用・不使用を分けて栽培しているのと同じようなものだろう。

 

もちろんどちらが安全かはいうまでもないが、医師だって本心では、がんの手術など受けたくないのである。

 

しかしどうして、医療はこんなに矛盾をはらんだ存在になってしまったのか。

 

 

 元々、医療というのは医師だけのものではなかった。

 

それが医師に独占されたのは、1960年に国民皆保険制度が施行されてからのことだ。

 

それまでの日本では、健康な人はもちろんのこと、病人でもめったに医師の診察を受けることなどなかった。

 

例え病院に行けたとしても、当時の医療レベルでは治せる病気も多くはない。

 

できることといえば、せいぜいケガの手当て程度のものだった。

 

 

 ところが戦後の社会の安定とともに、日本の公衆衛生と栄養状態は著しく改善した。

 

そのおかげで、医療とは関係なく日本国民の平均寿命は劇的に伸びた。

 

そして当時はほとんど医療に関わらなかった世代が、現在の元気な高齢者たちなのである。

 

 

 しかし今の医療は、この最長寿を牽引する人たちの単なる老化現象を病気として扱うことで、治療対象に組み込むことにした。

 

その結果、医療という名の巨大産業に発展して現在に至る。

 

しかも年々加速する超高齢化社会のおかげで、医療産業の推進力は増すばかりである。

 

確かにこの手厚い医療に対して、何も文句などないという人も大勢いるだろう。

 

だがそれでみな幸せに死ねるのかといえば、そうはいかない。

 

医療に深く介入された人ほど「こんなはずではなかった」という結果になっている。

 

 

 どうもわれわれは、「医学の進歩」という言葉のイメージに惑わされやすいようだ。

 

いまだ病気の全体像すらつかめていないのに、何をもって進歩というのか。

 

足元から数センチ飛び上がっただけで、「これで人類は月に近づいた」と豪語しているようなものである。

 

 

 近年、多くの人が環境問題に目を向けるようになった。

 

特に大気や水質の汚染物質、農薬や食品添加物に対しては、ことごとく敏感に反応してみせる。

 

ところがどうしたことか、いざ医療となると途端に思考停止に陥って、薬という有害物質に対して完全に無防備になってしまう。

 

検査のたびに浴びる放射線についても、自分が被曝しているという意識が全くない。

 

過去に受けた検査で、どれだけ放射線を浴びたかを計算してみたこともないはずだ。

 

肝心の医師たちが、患者の被曝総量など気にもしないのだから無理もない。

 

だが日本の医療被曝が海外では批判の対象であることを、当の日本人の多くは知らないのである。

 

 

 このように国民皆保険制度によって、日本の医療が莫大な金儲けの手段になって久しい。

 

そして社会構造のあらゆる層に、幾重にも組み込まれてしまっている。

 

この状況では、国家の土台を揺るがすような大恐慌や革命でも起きない限り、医療業界が自ら更生することなど不可能だろう。

 

ではこのような医療の実態を知ってどうするか。

 

それはあくまでも本人次第である。

 

体調が悪いわけでなければ、健康診断など受けないという選択肢もあるというだけだ。

 

すると必ず出てくるのが、「何かあったらどうするのか?」という質問だろう。

 

実際のところ、体に何か不具合が生じた段階で、その具体的な状況に応じて判断するのが最善なのだ。

 

そのことが、本書に掲載されている数多くのデータによって明らかになったのである。

 

                           (花山 水清)

 

※1『健康診断は受けてはいけない』

※2「医者が医者を批判するとき」当誌368号     

※3『イバン・イリイチ』

※4『健康生活委員会』

※5「胃がんについて考える」当誌352号

   

 

(花山水清メールマガジン 「月刊ハナヤマ通信」) 

  

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