花山 水清
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最先端医療は患者にとって最善か?

メールマガジン月刊ハナヤマ通信 354号 2016/04 

 

 「人はどんな方法を用いてでも、思考という本当の労働を避けようとするものだ」

 

といったのは、発明王エジソンである。

 

だれだって、自分の頭で考えるよりも、他人に決めてもらったほうが楽なのだ。

 

他人のせいにできるから、失敗したときの責任もとらなくていい。


自分の体のことでも、専門家である医師に任せたほうが安心だと考える人が大多数だろう。

 

 

 だが私がもっとも危惧しているのは、「自分は正しい」という思い込みである。


自分で何度も検証したことであっても、そこに必ず思い込みがあるはずだ。


そのことで情報の受け手に不利益を与える危険性もある。

 

それが医師の判断であれば、命取りになることも考えられる。


だからこそ当誌の読者には、何事も自分の頭で考えて、内容の是非を判断してもらいたいと思っている。



 この「自分は正しい」という思い込みは、夫婦ゲンカから国際紛争に至るまで、ありとあらゆるトラブルの元である。


医学の歴史もまた、この思い込みの連続だ。


「こうすれば治る」「これこそが患者のため」「自分は正しい」と思い込んだ医師たちの手によって、どれだけの患者が被害に遭ってきたかは医学史に問うまでもない。


いつの時代でも、治療という名のおぞましい行為や殺戮が繰り返されてきた。


そんな恐ろしいことが今の時代に起きるはずがない、などとだれがいえるか。

 

有史以来の医学史をトータルで量れば、患者の利益と不利益はどちらが多いかわからないぐらいだ。

 


 例えば、先日、来院した70代の女性は、肩の痛みで整形外科を受診した。

 

そこでは「肩インピンジメント症候群」および「肩甲下筋損傷」だという診断を受けた。


「肩インピンジメント症候群」とは、上腕をよく使うことによって腱板(けんばん)が傷害されたり、骨棘(こっきょく)ができたりして肩が痛み、肩関節の可動が阻害されると考えられている疾患である。


そのため彼女は、ヒアルロン酸や鎮痛剤による治療と、筋力をつけるためのリハビリテーションを行っていた。

 

ところが治療を開始して4ヶ月すぎても、肩の症状は一向に良くならない。


しかも医師からは、痛みの原因となっている骨棘を取り除く手術まで勧められた。

 

この方は手術と聞いて不安になったので、当院に来られたのだ。

 


 腕が動かしにくいというので、まずは頚椎のズレを戻してみた。

 

腕に症状が出るのは頚椎4番から下の骨である。

 

するとその場で肩の痛みはやわらぎ、動かしにくかった腕の可動域も大幅に広がった。


次に胸椎のズレを戻すと、「肩甲下筋損傷」と診断されていた肩甲骨周辺の症状も治まった。

 

やはりいずれの症状も、原因はわずかな背骨のズレだったから、指先で軽く矯正しただけで、手術など不要になった。

 


 ではこれが珍しい症例かというとそうではない。


私は今までにも、骨棘や異所性骨化が原因だと診断された人を数多くみてきている。

 

そのほとんどが整形外科での診断とは違って、背骨のズレが原因だった。

 

もちろん彼女の場合も、骨棘と症状とは全く関係がなかったのである。

 


 同様の話は当誌で
はおなじみだが、一般常識にはなっていない。

 

そのため単なる背骨のズレによる症状で、いったいどれほど多くの人がムダな投薬や手術を受けてきたことだろう。

 

しかしこれは整形外科だけに限った話ではない。

 

日本だけの問題でもない。

 

現在の医学的な検査・診断・治療は患者に対して有益なのか。

 

ひょっとすると世界中でとんでもない間違いを犯し続けているのかもしれないのだ。

 


 
「2400年の間、患者は医師が有益なことをしていると信じてきた。しかし、2300年の間、それは間違いだった」

 

これは歴史学者デイヴィッド・ウートン(David Wootton 1952-)の指摘である。


2400年前とは医聖ヒポクラテスの時代のことであり、2300年前とはフレミングがペニシリンを発見したころを指すのだろう。


確かにこの100年の間に、医学は飛躍的な進歩を遂げたかに見える。


ところがそれも、科学との二人三脚の結果、そう見えているにすぎない。


実際に進歩したのは機械工学であり、遺伝子工学であり、生物化学なのだ。


医学はそれらの科学的手法に身を任せただけで、何も変わっていないのではないか。

 

 

 もちろん医学が進歩したという話は、医者だけの思い込みではない。

 

患者もまた、最先端医療は最善の医療だと思い込んでいる。


しかし、最先端の医療が目の前の患者の利益につながる保証などない。


逆に、かつて散々脚光を浴びていた最先端医療が、あとになって検証してみたら、医学史に汚点を残しただけという話も多々ある。


だからといって、私は決して古い医学を信奉しているわけではない。

 

むしろ全く逆だ。

 

古い新しいの問題ではなく、病気を治せない医学に価値はないのである。

 

まして医療が患者に被害を与えるようでは論外だ。

進歩は正しいと思いたいが、正しいと思うと思い込みが強くなって謙虚さを失う。

 

また正しさの基準は時代に依存する。

 

だから、正しさが「正しく」評価されるには、どうしても時間が必要だ。


実はウートンほどの人でも、「現在に至る100年は、医療は患者に有益なことを行ってきた」と考えていたのだから、思い込みから抜け出せていない。


今現在の医療がどれほど間違いを繰り返していようと、同時代を生きている人間が、それを正しく評価するのは難しいということだ。

 

その難しさこそが、思い込みの思い込みたる所以であり怖さでもある。


今からまたさらに100年経ったとき、歴史学者が「この2500年のう
ち2400年は間違っていた」と評価することのないように、医学者が謙虚であってくれることを祈るしかない。

(花山 水清)

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