花山 水清
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医師に求められるシャーマンの役割が生むポリファーマシー

メールマガジン月刊ハナヤマ通信 344号 2015/06 

 

 

 「医者にとってもっともイヤな患者」という小話を聞いた。


ある医者の奥さんが、ちょっとした症状をダンナに伝えた。


すると「これでも飲んでなさい」と薬を渡された。

 

奥さんは、数日はその薬を飲んだが、一向に症状が治まらない。

 

そこで「アナタッ、あの薬、ゼンゼン効かないじゃない!」とダンナに文句をいったのだ。

 

するとダンナ氏は「あ~そうか。それならこっちの薬でも飲んでみるか」と軽くあしらった。


その態度に奥さんがぶち切れた。


「アンタッ! 病院でもそんないい加減に患者さんに薬を出してるのっ」と叱りつけたのだという。

 

 

 どこへ行っても医者は偉いが、家庭で偉いのは奥さんだ。


医者であっても、家庭内の序列には逆らえないという笑い話である。


だが一般的には、「薬が効かない」といって医師を叱りつける勇気のある患者はいない。


それどころか、患者の多くは医師がしっかり診断して処方しているのだから、その薬が効くのは当たり前だと思っている。

しかし医師というのは、直接生命に関わる症状でなければ、適当に薬を飲ませておけばそのうち治まるだろうとタカをくくっている節がある。


絶対にこの薬が効果を発揮するはずだ、などと確信をもって処方している医師などいないのではないか。


にもかかわらず、患者が期待しているのは時代劇に出てくる南蛮渡来の薬のような効果だ。

 

 

 ところが現実には、薬を飲んでその場で症状がピタリと止まるなどという展開はめったにない。

 

みな、薬に期待しすぎだ。


効いたように思える薬でも、その効果のほとんどが自然治癒力によるものである。

 

逆に薬が自然治癒力のジャマをすることもあるから、よほどのことがない限り薬は飲まないほうがいい。

 

実際、来院患者や奥さんには気楽に出す薬でも、それを愛するわが子に常用させる医師などいないはずだ。

 


 先日、ある男性が陰部に痛みを感じて泌尿器科を受診した。


医師はまず前立腺がんを疑って、一通りの検査をした。


しかし異常が見つからなかったので、とりあえず前立腺炎だと診断して抗生物質を処方した。

ところがその薬を飲み続けても、全く症状が治まらない。


そこで私が調べてみると、彼の陰部の痛みは腰椎と骨盤のズレが原因だったのだ。

 

 

 私はこれまでにも、同様の症例はイヤというほど見てきた。


当誌でも何度も書いてきたので、おなじみの読者も多いだろう。


もちろん痛みの原因となっているズレを戻したら、症状が即座に解消した。


つまり彼が飲み続けてきた薬は、全くムダだったのである。

 


 日本に限ったことではないが、医療システムというのは、必要のあるなしにかかわらず薬を使うことで成り立っている。


そのため、ことあるごとに薬で何とかしようと考える医師が圧倒的な多数派だ。


その結果、多剤併用や医薬品の不適切な使用による薬物有害反応が、数多く発生することになる。

 

これがポリファーマシーと呼ばれる状態だ。


特に高齢者の場合は、それが深刻な事態へと発展する頻度も高い。

 


 高齢者はみな、処方されている薬の種類が非常に多い。


それらの薬の副作用には、ふらつきや目まいを伴うものもたくさんある。


そのふらつきで転倒して大腿部を骨折し、寝たきりになって、誤嚥性(ごえんせい)肺炎で死亡する。

 

これが高齢者の末路のパターンになっている。


統計でも、80代以上の高齢者は転倒以降の死亡率がグンと高いのである。

 

 
 また高齢者になると、自分で薬の管理ができないケースが増える。


ある80代の女性は、4科の医師からそれぞれ処方された薬の合計が、10種類にもなっていた。


それらの半分ほどに、ふらつき・目まいの副作用があって、注意書きには車の運転や高所作業は避けるようにと書いてある。

 

本人も日常的に「ふらつく、目まいがする」と訴えて、病院に行くたびにまた薬が増える。

 

しかも薬を飲んだこと自体を忘れて、調子が悪いなと感じると、同じ薬をたて続けに飲んでしまうこともよくある。


高齢者でなくても、薬というのは飲めば飲むほどいいものだと誤解している人は、驚くほど多いのだ。

 


 こういった薬の副作用で、転倒を繰り返している例が多いことは、容易に想像がつくが、処方している医師たちは、そんなことには全く頓着しない。


しかもほとんどの医師は、薬を増やすことはあっても減らすことなどない。

 

患者がよほど必死に頼み込まない限り、薬を減らすのはいやがるのである。


まして他科の専門医の処方には一切関知しないという、妙なセクト主義まではびこっている。

 

 今後急増するといわれている認知症にしても、その原因の一端はこのポリファーマシーにある。


そもそも薬の処方に、医師がほとんどの権限をもっているのは異常なことだ。


薬の専門家は、医師ではなく薬剤師のはずではないか。


薬剤師から見れば、医師は薬の副作用に関して勉強不足だと感じることが多いという。


このようないびつな医療システムが続くと、ポリファーマシーのような問題が、さらに深刻化するのは当然だろう。

 

 だがこのシステムを支えているのは、ひたすら薬を求め続ける患者自身である。


まともな医師が「薬で治るわけではない」と説明しても、「なんでもいいから薬を出せ」と迫る患者は多い。

 

この現実を見れば、医療に求められているのは病気治療ではなく、不安の解消なのだと思えてくる。


そういった心理の深い部分での不安を解消できなければ、ポリファーマシーの問題も解決できない。

 

私は肯定はしないが、実は現代の医師に求められているのも、あらゆる不安から開放してくれるシャーマンの役割なのかもしれないのだ。 

(花山水清)

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