メールマガジン月刊ハナヤマ通信 343号 2015/05
先日、友人が心臓の検査を受けたら、冠動脈が細くなっていると診断された。
医師からはカテーテル治療を提案されているという。
冠動脈とは心臓の筋肉に酸素を送るもっとも重要な血管である。
その冠動脈で血流が遮断されれば、心筋梗塞となって命に関わることになる。
そこで狭くなった冠動脈にステントと呼ばれる金属製の管を挿入して、血管を広げるのがカテーテル治療である。
カテーテル治療が開発され、マスコミで発表されたのは確か1990年代のことだった。
当時は、なんと画期的な治療法だと驚いた。
そのカテーテル治療を医師から勧められた友人は、私にどうしたら良いかと相談してきたのだ。
正直にいえば、このような相談はなるべく受けたくない。
責任重大なので安易なことはいえないし、実際、彼の冠動脈がどの程度狭くなっているのかも私にはわからない。
だが医師の判断でも、あまり緊急度が高い状態ではなさそうだ。
そもそも彼が検査を受けたのも、特別な症状があったからではない。
たまには心臓も調べておこうか、という程度だったようだ。
それなのに彼はCT検査まで受けていた。
最近の病院では、心臓病を疑う患者には即CT検査を行うようだ。
しかし以前なら、心電図や血液検査をした後で、特に心臓病の疑いが強い場合にカテーテル検査を行っていた。
心臓の検査となると、CT検査はもちろん、カテーテル検査では少なくとも10ミリシーベルトもの放射線に被曝することになる。
当然これらの被曝によって、将来的に心筋梗塞のリスクが跳ね上がってしまうことがわかっている。
現在の心筋梗塞の発症リスクと、将来のリスクをどう天秤にかけるかは誰にとっても悩ましい問題である。
しかも今現在のリスクの回避といっても、さらに問題がある。
発表された当時は画期的だと思っていたステント治療も、実は完成された治療法ではなかったのだ。
ステントを挿入した部分では、再度、血管が狭くなる頻度が割合高いし、最新の改良型のものでも再発のリスクは残されている。
進歩したとはいえ、カテーテル治療そのものにも十分リスクがあるのだから、気軽に勧められる治療法とはいえない。
私はこれまでにも、心筋梗塞と胸椎のズレとの関係について何度も言及してきた。
それでは冠動脈が狭くなることにも、胸椎のズレは影響しているのだろうか。
前回もお伝えした通り、胸椎のズレが動脈硬化の原因になっている可能性は高い。
動脈硬化は心筋梗塞の最大の原因だといわれているが、胸椎のズレが動脈硬化を引き起こしているのであれば、冠動脈が狭くなる原因になっていることも考えられる。
だからといって、胸椎のズレを戻したら、一度狭くなった冠動脈が再び広がるかどうかまではわからない。
私がそれを調べることもできないから、今ははっきりとしたことはいえないのだ。
だが、過去に心筋梗塞などの心疾患を発症した人には、共通した特徴がある。
彼らの胸筋は異常に硬くて、みな緊張状態になっている。
まるで胸筋が肋骨にへばりついているように感じられることもある。
これは明らかに、交感神経が極度の興奮状態にあることを示しているのだ。
そしてその異常な胸筋の緊張は、胸椎のズレを戻した途端に消える。
つまり胸椎のズレが交感神経を介して胸筋を緊張させていたのだ。
さらに、交感神経は心筋に対しても同様の作用を及ぼしている可能性がある。
本来、心臓の機能とは血液を送り出して全身に循環させることだ。
従って、心臓の運動機能の優劣は、心筋の伸縮能力の違いなのである。
この心筋と呼ばれる心臓を動かす筋肉は、胸筋などの骨格筋同様に横紋筋という筋肉でできている。
胸椎のズレは交感神経を異常な興奮状態にしているから、胸椎がズレて胸筋が緊張状態になれば、同時に心筋の伸縮能力にも影響が及ぶ。
その結果、心筋梗塞の発症にも関係してくることが予想されるのだ。
また一般的にも、心筋梗塞の治療後も交感神経の亢進状態が続くことが知られている。
このことが心筋梗塞の再発の可能性にもなっている。
だが医学的には、なぜ交感神経の亢進状態が続くのかは不明なのである。
しかしこれも、胸椎のズレが解消されていないことが原因ではないかと私は見ている。
さて、前述の友人の胸筋を調べてみたところ、ほとんど緊張状態は見られなかった。
この程度なら、さしあたって特別な治療は必要なさそうだ。
なまじ検査など受けなかったほうが、精神衛生上も良かった気がするが、私の立場でそんなことをいうわけにはいかない。
もちろん心臓の検査や治療は、命に関わる重要なことである。
けれども検査と治療が人体に及ぼす影響も、決して軽視できるものではない。
それならば、せめて心臓に特別な異常を感じないうちは、心電図と血液検査に胸椎のズレのチェックを加える程度に留めておきたいものである。
(花山水清)