メールマガジン「月刊ハナヤマ通信」 342号 2015/04
「コレステロールを過剰摂取しても血清中のコレステロール値は上がらない」
アメリカの厚生省と農務省が設置した「食事指針諮問委員会」が、この2月にこんな発表をしたのをご存じだろうか。
これは従来の医学常識を根底から覆す内容だが、その後、国内のマスコミが騒ぐ気配がない。
コレステロールを摂り過ぎると血清中のコレステロール値が上がり、動脈内壁にコレステロールが沈着して動脈硬化の原因になるというのが、これまでの常識だったはずだ。
動脈硬化は脳卒中や心筋梗塞を引き起こす要因となるから、できるだけコレステロールを減らした食事が推奨されてきたのである。
ところが実際には、コレステロールをたくさん摂ったからといって、太るわけでもないし、動脈硬化になるわけでもないという。
逆にコレステロールは大いに摂取すべし、そのほうが体に良いとまでいうのだから驚くではないか。
国の内外を問わず医学界でもマスコミでも、あれだけ悪玉だのメタボの原因だのと大騒ぎしてコレステロールを敵視してきたのに、あれは何だったのか。
結局、根拠のない話だったというのなら、それはそれでマスコミもそれなりの報道をすべきである。
食品に含まれるコレステロールが悪者ではなかったとなると、何が原因で血清中のコレステロール値が上がってしまうのか。
動脈硬化の真の原因は何なのか。
食品中のコレステロールが冤罪だったとしても、肝心の真犯人は野放しのままだ。
しかし私は『からだの異常はなぜ左に現れるのか』において、動脈硬化の大元の原因がコレステロールのせいではないことをすでに説いた。
くわしくは本書をご参照いただきたいが、要は動脈硬化には背骨のズレという機械的な要因が介在していると考えられるのだ。
頭蓋や頚椎が大きくズレた状態を見れば、それらのズレはまちがいなく頸動脈や椎骨動脈に対して障害を与えている。
人体の構造を考えれば、逆に何の影響もないと考えるほうがおかしい。
ズレを戻したときに起こる血流の変化からみても、その結果は十分に予測しうる。
しかも同様のことは、頚椎だけでなく胸椎や腰椎などでも起こる。
たとえば動脈硬化による代表的な症状に、間欠跛行(かんけつはこう)がある。
間欠跛行とは、歩行の最中に下肢の痛み・しびれなどで突然歩けなくなり、しばらく休息するとまた普通に歩けるようになるというふかしぎな症状だ。
同じような症状は、腰椎がズレている人にもしばしば見られる。
医学的にはズレという概念がないため、ズレによる影響も医学的に考慮されることがなかっただけなのだ。
さらにさまざまな症例や、ズレの解消後に見られる現象から判断すると、背骨のズレは交感神経の緊張を持続させていることがわかる。
この交感神経の緊張の持続も、十分に動脈硬化の原因となりうる。
背骨のズレによってダメージを受けた動脈壁には、修復のためにマクロファージなどの免疫細胞が集まる。
肝臓ではコレステロールが新たに生合成される。
すると血清中のコレステロール値は上昇し、血管内壁のダメージ部分にはコレステロールが沈着する。
このような状態が一般的に動脈硬化だとされているのではないか。
しかもここで重要なのは、これらのことが一過性の現象では終わらない点だ。
原因となっている背骨のズレを戻さなければ、交感神経の緊張状態も続くし、コレステロール値が下がることもない。
それが脳卒中や心筋梗塞の大きな原因となるだけでなく、発病後も同じリスクが持続してしまうのである。
またコレステロールが悪者ではなかったとなると、大きな問題として浮上してくるのが、スタチンと呼ばれるコレステロール降下剤の存在である。
スタチンは、コレステロール低下作用と動脈硬化の予防作用を持つといわれている。
だからこそ脳卒中や心筋梗塞の予防薬としても多用されてきた。
しかし動脈壁の修復のために生合成されていたコレステロールまで、スタチンが減らしてしまうなら、逆に脳卒中や心筋梗塞のリスクが上がるのではないか。
スタチンによって、脳卒中や心筋梗塞のリスクが低下しているという医学データが正しいのであれば、それは血清中のコレステロール低下作用のせいではない。
これまではスタチンの効果としては脇役だと認識されてきた、血管内皮機能改善、抗炎症作用、免疫機能改善などのおかげだったと考えられる。
さらに気になるのが、コレステロール値を下げ過ぎると、認知機能の低下やうつ病の発症原因となる点である。
これは医学的にも認められた事実であるが、当の医療者でもそう認識している人は意外に少ない。
そのためむやみに血中のコレステロールを下げ過ぎて、健康を損なっている可能性も否定できない。
こういったわけだから、コレステロールについては今後、さらなる検証が待たれる。
いずれにしても、今回のコレステロールに対する評価の手のひら返しは、医学史に残る事件といえる。
これまでにも医学的に正しいとされてきた定説が、あとからひっくり返るのは珍しいことではない。
タバコ・肉・塩あたりも、今では悪役としての地位が揺らいできているようだ。
「それじゃあ、何を信じればいいのだ」
そんな嘆きが聞こえてきそうだが、医学常識というのはその程度のものだということを、日ごろから認識しておくしかないだろう。
(花山水清)