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寝たきりにならない方法はあるか

メールマガジン月刊ハナヤマ通信 Vol.326 2013/12

 

 最近、「健康寿命」という言葉が一般化しつつある。

 

「健康寿命」とは、介護などの支援を受けずに自立した生活ができる年数のことである。

 

2004年のWHO保健レポートでは、日本人の「健康寿命」は、男性72.3歳、女性77.7歳、全体では75.0歳で、世界第一位となっている。

 

その一方で、日本の寝たきり老人の数も先進国のなかでは極めて多く、寝たきり10年は当たり前とまでいわれているのだ。

 

日本の平均寿命が世界最高水準であることから考えると、寝たきり老人の問題は世界でもきわめて異例だろう。

 

 

 高齢の女性の多くは、「自分は誰にも面倒をかけずにポックリ死にたい」と話す。

 

彼女たちは配偶者の両親を看取り、自分の両親を看取り、しまいに夫まで看取ってきている。

 

その経験を通して、寝たきりの病人の世話が、いかに大変であるかが骨身にしみている。

 

だからこそ、自分だけは家族にそんな手間をかけさせずに死にたいと願っているのだ。

 

 

 厚生労働省も、寝たきり予防の「ゴールドプラン」のように、介護充実の基盤整備を推進してきた。

 

しかし介護を充実させても、決して寝たきりの予防にはなっていない。

 

予防であれば、介護を受ける前段階での対策が必要だ。

 

では一体どうすれば、抜本的な寝たきり予防対策になるだろうか。

 

 

 そもそも人はなぜ寝たきりになるのか。

 

一般的には、脳卒中などの脳血管障害を始め、パーキンソン病や脳腫瘍などの重大疾患が原因で寝たきりになる。

 

しかし実際に寝たきりになる前の段階で歩けなくなるのは、ひざの痛みなどといったささいな症状がきっかけになっているのである。

 

 

 ごくありふれた例として、先日起きたできごとを紹介したい。

 

私の母は今年82歳になった。

 

世の高齢女性と同様、夫と自分の親を4人看取り、2年前に夫を送って以来、一人暮らしを謳歌していた。

 

82とはいえ、まだまだポックリどころか自分が死ぬなどとは考えていないようだった。

 

ところが半年前、軽い脳梗塞を発症した。

 

幸いにも発見が早かったので、大きな後遺症もなく10日ほどで退院できたが、さすがにそろそろ一人暮らしは無理かなと思っていた。

 

そんな矢先、トイレで急にひざが痛くて立ち上がれなくなってしまったのだ。

 

なんとかしようともがいても動けないので、その日は疲れ果ててそのままトイレで寝入ってしまったらしい。

 

その後なんとか自力で脱出したが、その翌日、今度は風呂でもひざがきかなくなって、トイレのときと同様、風呂の入り口でそのまま一夜を明かしたのだという。

 

たまたま気になって電話してみたら、のんきにそんな話をするので、慌てて車を飛ばしてかけつけた。

 

 

 私が到着した時点で、最初の発症から4日目である。

 

自立型の杖2本を使ってようやく立ち上がれる状態であったが、ひざが痛くてよく眠れないのだという。

 

症状はかなり重症でも、痛みの原因そのものは単なる腰椎のズレだったので、何回かの矯正で痛みも軽減していった。

 

しかしこの数日歩かないでいた分、ひざの関節が固くなっているので、リハビリが必要な状態だ。

 

高齢者の場合、痛みが完全に取れるまでじっとしていると、筋力が落ちて本当に歩けなくなってしまう。

 

 

 母もしばらく外出できずにいたし、今まで経験したことのない激しい症状で気持ちがふさいでいる。

 

そこで、気晴らしも兼ねて市場へ買い物に連れて行った。

 

大好きな市場で歩き出すと、徐々に歩き方も力強くなってきた。

 

こうして3日ほどつきそって、背骨のズレの矯正とリハビリの散歩を繰り返したら、杖も使わずにスタスタ歩けるようになった。

 

電話口で、全く歩けなくなったと聞いたときには肝が冷えたが、これでまずは一安心だろう。

 

 

 それにしてもこのような状況のとき、他の人たちどうしているのだろうかと心配になる。

 

同居している家族がいれば、救急車を呼ぶことになるだろう。

 

それでうまく入院できればよいが、空きベッドがなければ、鎮痛剤をもらってタクシーで帰宅することになる。

 

一人暮らしなら、思うように動けない状態で家に帰されても途方に暮れるだけだろう。

 

仮に同居家族がいたとしても、本人が自力で歩けないようでは、トイレに連れて行くのも大変だ。

 

 

 首尾よく入院できても、鎮痛剤で一時的に痛みの緩和したからといって歩けるようにはならない。

 

そうなると、当然、医師からはひざの手術を勧められる。

 

だが実際にひざが悪いわけではないのだから、ひざの手術したからといって歩けるようになる保証はない。

 

しかし病院としては、何もしないで入院だけさせるわけにはいかないのだ。

 

どちらにしても車椅子の生活になって、いずれ介護施設のお世話になる。

 

その時点ではひざ以外に悪いところがなくても、高齢者が歩けなくなれば、その先には寝たきり10年の生活が待っている。

 

そのうち認知症も発症して、自分の人生が自分のものではなくなってしまうのだ。

 

 

 これは決して大げさではない。

 

高齢者の周辺では、ごくごくありふれた話である。

 

自分の周りに、ひざの痛いお年寄りが一人もいないという人のほうが稀だろう。

 

 

 私の死んだ祖母も、ひざが悪くて80代で歩けなくなった。

 

その後、認知症を発症して、103歳で亡くなるまで寝たきりだった。

 

今思うと、あのときの祖母のひざ痛も単なる背骨のズレだったかもしれない。

 

ひざ以外に異常がなかったのだから、ズレさえ治していれば、元気な老後を過ごせる可能性もあったはずだ。

 

 

 要は歩けさえすれば、自分で自分の身の周りのことができるのに、ひざが痛いとなると、寝起きからトイレの用足し、風呂の出入り、衣服の脱ぎ着にいたるまで、日常生活の全てに支障が出る。

 

すると他者の支援なしでは生活が成り立たなくなる。

 

これがもし、ひざが痛み始めた段階で対処できていれば、寝たきりにもならず、認知症の発症を遅らせることもできたかもしれない。

 

たかがひざと思うなかれ。

 

ズレによるひざの不調が、健康寿命を10年、20年縮めていることは否定できないのである。

 

 

 しかもズレの影響はひざだけではない。

 

認知症そのものの発症にも、ズレが直接かかわっている可能性も見えてきた。

 

そこで次回は、老後の最大の問題ともいわれる認知症についても考えてみようと思っている。

 

(花山 水清)

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