花山 水清
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がん検診でがんになる!?

メールマガジン月刊ハナヤマ通信 Vol.324 2013/10 

 

 以前、差し歯にした前歯が、またグラついてきた。

 

これまでにも何度か抜けそうになったが、そのたびに歯科医に接着剤で付け直してもらうだけで済んでいた。

 

ところが、いつも通っていた近所の歯科が、遠くに移転してしまった。

 

それでも、よく知っているところのほうが安心なので、最近は2時間近くかけて移転先まで通っていたのである。

 

しかし今回はそこまで出かける時間がない。

 

そこでネットで調べて、近所の歯科を受診することにした。

 

 

 どこの歯科でも、初診の場合はまずレントゲンを撮る。

 

しかし私の場合は、抜けかけた差し歯を入れ直すだけなので、レントゲンなしでお願いしてみた。

 

初回はこちらの要求通りレントゲンは不要だった。

 

ところが再診の際、今度はどうしてもレントゲン撮影が必要だという。

 

私が首を縦に振らずにいると、その歯科医は「レントゲンぐらい大したことないですよ」といったのだ。

 

そのひと言で、私はこの歯科に通うのを止めた。

 

 神経質なようだが、1回の放射線量は大したことはなくてもそれなりのリスクはある。

 

たった1回の撮影でも脳腫瘍のリスクが上がるというデータも存在するのだ。

 

従って医師は患者に対して、レントゲン撮影の放射線被曝のリスクを、今現在わかっている限りのデータを元にして説明すべきである。

 

それを「大したことはない」のひと言で済ませるようでは、信頼できない。

 

福島第一原発の爆発事故の際に、放射線量のデータを伏せながらも「安全です」と説明するようなものだ。

 

そんな安全宣言では、返って疑心暗鬼になるのが関の山だろう。

 

  

 これはこの歯科医だけの話ではない。

 

他科の医師も、そのほとんどが患者の医療被曝のリスクなど全く気にしない。

 

患者がそれまでにどれだけレントゲン検査を受けてきたかなど知ろうともしないし、興味もない。

 

だから、医療被曝による健康被害についての説明など一切行わないのだ。

 

 

 一般の国民にしても、日本は皆保険制度をもつ安心・安全な医療大国だと認識しているだろう。

 

しかし日本ではその保険制度が災いし、諸外国に比べて不必要なレントゲン撮影を強いられているケースが非常に多い。

 

例えば海外ではとうの昔に、腰痛での来院患者に対して、一律でレントゲン撮影を実施するのは意味がないという認識になっている。

 

ところが日本ではいまだに、飲み屋のお通しのごとく「まずはレントゲン」なのである。

 

 

 また、健康診断で胸部レントゲン撮影を国民に義務付けているのも日本だけだ。

 

そのため日本人は世界でいちばん医療被曝している。

 

さらに、日本にはがん検診をまじめに受けている人も多いので、バリウムによる胃がん、胸部レントゲンでの肺がん、マンモグラフィによる乳がんなどのがん検診で、その都度、被曝している。

 

そして医療被曝量が世界一でありながら、それがどれだけ健康被害を与えているかの正確なデータがわれわれの目に触れることもない。

 

いや、そんなデータなど知らなくても国が守ってくれているはずだ。

 

そう思いたい。

 

国というのは、国民の健康を守る義務があると思ってきた。

 

しかし原発が爆発したら、国は国民を守る基準であるはずの年間被曝限度量のほうを引き上げてしまった。

 

これは、高血圧の基準を、最高血圧200mmHg以上に引き上げてしまえば、高血圧の患者がほとんどいなくなるのと同じだ。

 

被曝限度量を引き上げておけば、統計の数字の上では、爆発事故の被曝による健康被害者は少なくなる。

 

被害者の数を減らせば、国が補償するべき対象も減る。

 

すわなち、将来的に国家の支出が抑えられるという計算なのだ。

 

 

 そういったお国の裏事情はともかくも、医療被曝の問題はだれもが知っておくべきである。

 

ちょうどここに興味深い本がある。

 

医師で、新潟大学名誉教授の岡田正彦の著書、『放射線と健康被害20のエビデンス』には、肺がん検診におけるデータが紹介されていた。

 

1990年当時のチェコスロバキアで行われたこの調査では、3年間に6回胸部レントゲン検査を受けた人たちと、3年間に1回だけ受けた人たちとで、肺がんの胸部レントゲン検査の有効性を比較している。

 

調査の目的は、有効性の証明のはずだった。

 

しかし結果として、検査を6回受けたグループのほうが、1回だけ受けたグループよりも肺がんでの死亡者数が27%も多かった。

 

この衝撃の事実が明らかになってしまったのだ。

 

このデータから著者は、肺がん検診で胸部レントゲン検査を1回受けるたびに、肺がんが発生する割合が5.4%増えるという数字を導き出している。

 

この事実からは、肺がん検診の正当性がゆらぐどころか、逆に検診によって大量の肺がん患者を生み出してきたことがわかるのだ。

 

 

 この本では肺がんのリスクだけを取り上げているが、このデータによってさらなる問題も想起される。

 

肺がん検診だからといって、胸部レントゲン検査では放射線が肺だけに照射されるわけではない。

 

胸腔内の食道、心臓、骨髄ばかりか、乳房にも照射される。

 

それらの器官に、被曝の影響がないわけがないのだ。

 

 

 また乳がん検診で受けるマンモグラフィでは、体全体への放射線量は少ないので、その分、健康被害も少ないといわれてきた。

 

それでは胸部レントゲン検査を受けたときの、乳がんのリスクはどうなのか。

 

さらに、マンモグラフィと胸部レントゲン検査、PET検査まで追加で受けた場合には、リスクはどう変化するのか。

 

胸部レントゲン撮影1回で5.4%も肺がん発生の割合が上がるのだから、他の検査での線量を合わせると、がんの発生リスクはかなり高くなる。

 

さらに、子供の頃から検査のたびに浴びた線量を全て合わせると、どれだけ発生率が上がるだろうか。

 

そう考えると、日本人の死因の第1位であるがんは、その最大の原因が医療被曝によるものかもしれないのだ。

 

そして残念ながら、この疑いを否定してくれるデータがない。

 

あるのは、医師による「レントゲン程度、大したことないですよ」のひと言だけである。

 

 

 また、福島第一原発の爆発事故では、病院でのレントゲン検査よりも放射線量が少ないといって、被害などあり得ないもののように説明していた。

 

しかし今まで検診で受けてきた医療被曝の総線量に、福島第一原発からの放射線が加算された場合はどうなるのか。

 

それは、今後の数年から数十年かけて答えの出る問いである。

 

 

 日本人の多くは、まじめにがん検診を受けたほうが死亡率が低くなると信じてきた。

 

しかしレントゲンによるがん検診は、受けた分だけ、がんの発生率がまちがいなく上昇する。

 

これが世界の常識なのだ。

 

だれしもがんになどなりたくはないが、がん患者になるのと、がん患者にさせられるのでは意味が全く違う。

 

私だってもちろん、必要があれば検査や治療による被曝は仕方がないことは理解している。

 

だがそれはあくまでも、検査のメリットと被曝による被害を天秤にかけたうえで、その必要性を正確に判断してからの話だと思うのだ。

(花山 水清)

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