花山 水清
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有機野菜は安全なのか?

メールマガジン月刊ハナヤマ通信 Vol.322 2013/08 

 

 私は最近まで土いじりが苦手だった。

 

土を触ると爪のなかが黒くなるし、入り込んだ土はなかなか取れない。

 

だから、陶芸でろくろを回そうなどと思ったこともない。

 

まして畑仕事など、土の中にはわけのわからない虫がうじゃうじゃいるのに、興味が湧くわけがない。

 

 

 そんな私が、近ごろでは家庭菜園に凝っている。

 

変われば変わるもので、人生には予想外のことがあるものだ。

 

家の周りのほんの僅かのスペースに、カボチャ、サトイモ、アスパラ、枝豆、トウモロコシ、ゴーヤ、インゲン、メロン、スイカ、小ネギ、ホウレン草、小松菜、大根葉、からし菜、わさび菜、山東白菜、長芋、安納芋に金時芋まで植えている。

 

私は欲張りなのだろうか。

 

移動が多い生活なので、なかなか畑にかまってもいられないのだが、先日初めてメロンの幼果と大根葉を食卓にのせることができた。

 

人生初の収穫である。

 

うれしくないはずがない。

 

自然と、朝、起きるのが早くなる。

 

家に居られるときは、朝一番に野菜たちを見回って、夕方には水撒きをするのが日課となった。

 

原稿書きの合間に草をむしり、目に付いた小石を取り除く。

 

作物の生長する姿を見るのは格別に楽しい。

 

最後には食べてしまうのだから、愛情をこめて育てるという表現は当てはまらないが、それでもやっぱり愛でている。

 

 

 私の父は畑仕事が好きだった。

 

それを見ていたので、畑というとどこか年寄り臭い気がしていた。

 

なぜ私がここまでのめりこんだのかはわからない。

 

そういう年になっただけなのかもしれない。

 

だが始めた理由そのものは単純である。

 

土さえあれば、野菜は買うより作ったほうが安上がりだと気付いたからだ。

 

野菜を買ったほうが安ければ、今でも野菜など作らないかもしれない。

 

従って、作物に水以外の肥料などを買い与えることはない。

 

結果として今流行の有機農法になっている。

 

 

 しかし私は、有機だのオーガニックだのという言葉は好みではない。

 

「有機農法だからおいしくて健康だ」などと聞くと、何だか居心地が悪い。

 

 実は有機農法や有機野菜という言葉には、独立した意味などないのだ。

 

元々、動物や植物は全て有機化合物である。

 

動物の死体や排泄物、枯れた植物などは、土中の微生物によって分解されて無機化合物になる。

 

それら水や窒素、リン、カリウムなどの無機化合物を、植物が養分として吸収する。

 

だから化学肥料だろうが堆肥から作った肥料だろうが、無機化合物として野菜が吸収するときには全く同じである。

 

堆肥から作った窒素やリン、カリウムなどの元素が、化学肥料の元素と違うものになっていたら、それこそ大変なことだ。

 

もちろん化学肥料でも有機肥料でも、できた野菜は全て有機物だから有機野菜である。

 

逆に無機野菜などこの世に存在しない。

 

なので「有機、有機」と騒ぐのを聞くと、単なる呼び名だとわかっていても釈然としないのである。

 

 

 また、有機肥料と無機肥料(=化学肥料)で、野菜の成分にも違いがないのだから、当然、味にも違いはない。

 

「有機だからおいしい」などというのは、思い込みに過ぎない。

 

イギリスでの調査でも、有機野菜と化学肥料をやった野菜とでは、成分に違いがないどころか、味に違いがないことも証明されている。

 

有機農法を熱心にやっている人には、耳をふさぎたくなる話かも知れないが、ある一流の料理人も「オレにも味の違いはわからない」といっていた。

 

それが当たり前だ。

 

 

 一方で、健康食品(サプリメント、栄養補助食品)を売る人間たちは、「昔に比べて今の野菜だけでは栄養が足りないから、その分をサプリで補わなければいけない」などという。

 

ではその昔の野菜というのは、いつの時代の野菜のことか。

 

ほとんどの野菜は常に品種改良され続けているから、昔の野菜など存在しない。

 

誰がいつどこで、昔の野菜と今の野菜の成分の違いを検査したというのか。

 

そもそも野菜など同じ畑でも場所によって生育が全く違うのである。

 

そこには栄養の違いも出てくる。

 

工業製品ではないのだから、全て同じ野菜などあるわけがない。

 

そうなれば、検査結果も正確だとはいいがたい。

 

 

 さらに最も問題なのが安全性である。

 

それこそ一昔前の野菜作りには、有機リン系や有機塩素系の殺虫剤を大量に使っていた。

 

これらの殺虫剤にも、名前に「有機」がつくから安全で健康だでもいうのだろうか。

 

もちろん、国内ではDDTなどのような殺虫剤は使われなくなっている。

 

しかし最近、問題になっているのが、有機農法で殺虫剤を使わなくなったせいで、逆に植物自体の毒性が強くなった点である。

 

 

 本来、植物は害虫から身を守るためにアルカロイドなどの毒性を備えている。

 

そのような毒性があると、苦味や渋味などとして現れるので食用に適さない。

 

そこでわれわれは植物を食用とするため、品種改良でその毒性を少なくしたうえで、殺虫剤を撒いて虫から守ってきたのだ。

 

ところが人間が殺虫剤を撒いてやらなければ、植物はまた自己防衛のために自らの毒性を高めなければならない。

 

こうなると、殺虫剤を使ったほうが安全なのか、使わないほうが安全なのかは一概にはいえないのである。

 

 

 実は循環型農法である有機農法には、他にも危険性がある。

 

循環するのは全て良いものだと考えるのは大きなまちがいだ。

 

有機野菜をサラダなんぞにして、ギョウチュウや回虫などの寄生虫を体内に循環させるはめになった人がいたことはご存じの方もいるだろう。

 

それよりも問題なのが、堆肥作りによって重金属や残留農薬、サルモネラ菌などが野菜に濃縮してしまう点だ。

 

さらに原発爆発で放出された放射性物質が、循環型農業によって野菜に濃縮されることも懸念される。

 

もう「有機野菜は安全でおいしい」などとのんきなことをいっていられる時代は終わった。

 

爆発の直後に某大臣が連呼していたように、「ただちに健康に影響はない」の「ただちに」の期間はもう終了したのである。

 

 

 以前の私は、食中毒の問題以外では食の安全性になど大して興味はなかった。

 

これまでは国産の野菜から安いものを選ぶだけですんでいた。

 

だが今では産地偽装の問題まで考えると、選択が非常に難しくなってしまった。

 

わざわざ野菜を遠くから取り寄せるとなると高くつく。

 

そうなると自分で作るのが最も安上がりだ。

 

安全性もある程度は把握できて効率が良い。

 

これが私が野菜づくりに励む理由なのである。

 

 

 もちろん野菜づくりの意味はそれだけに留まらない。

 

自らが育てた生命を食べることで、「生きる」ことの意味に触れている気さえする。

 

葉についた虫を見つければ排除もする。

 

そこには明確な命のやりとりがある。

 

たとえ葉っぱ1枚であったとしても、自分以外の命をはぐくむ体験には、何かしら人間には不可欠な要素があるのだろうか。 

 

こんなことを考えるようになったのも意外な副産物だった。

(花山 水清)

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